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遠隔医療の今と未来についてUrDocが考えること【前編】

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日本でも大きく発展しつつある遠隔医療。事実上の解禁といわれた厚労省の通達をきっかけに複数のサービスが生まれ、2018年3月にはガイドラインも策定されました。さまざまな課題と可能性を持つ遠隔医療について、UrDoc法律顧問の鈴木孝昭弁護士(弁護士法人AIT医療総合法律事務所)、野崎智己弁護士(10月1日より同)、そしてUrDoc代表の唐橋が話し合いました。前・後編の2回にわけてお届けします。

 

「お医者さんを守る」という視点

 

唐橋:鈴木先生に初めてお目にかかったのは一昨年の秋、日本遠隔医療学会です。鳥取でしたね。講演を聴いて、この先生は信頼できると思いました。

鈴木:UrDocの事業化を考えているということで、会場で声をかけてもらったのでしたね。

唐橋:そこからいろいろ相談するうちに素敵な仲間が入るとうかがって、それが野崎先生でした。鈴木先生とは司法修習生の同期だったとか。

野崎:そうですね、一緒に勉強した仲で。10月1日からAIT医療総合法律事務所に参加することが決定しました。

唐橋:法律顧問をお願いした理由はいろいろありますが、一つには、UrDocに参加してくれる医師を守りたいから。オンライン医療相談という新しい領域で、参加する医師が知らないうちに法律をおかすようなことがあってはいけない。医師を守ることが、ユーザーの安心・安全にも直結します。

その点で鈴木先生は、医師であり弁護士でもあるという稀な存在です。

鈴木:法律のことを知らないと、やっぱり怖いですよね。お医者さんの世界って、何かあるとトカゲの尻尾切りのように責任を取らされたり、立場を追われたり、という話も聞きます。

反対に、勤務医の先生が無責任な治療をしてトラブルばかり起こしてしまい、院長などが重責に押し潰されそうになり、相談を受けることもあります。

私自身医師なので、治療をする医師の立場にもともといたわけですが、その立場から見ても、スタッフに指示するにしろ自分でやるにしろ、投薬を間違えた時や、予期せぬ事故を起こしてしまった際に、どんな責任が自分にかかってくるのか怖くて仕方なかったです。

民事賠償責任がどうなのか、刑事罰はどうなのか、とか、不安なことばかりで、研修中や研修医が終わってからある程度経験値が高まるまでは特に怖かったですね。

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唐橋:若いお医者さんは労働環境も過酷です。

鈴木:お医者さんの勤務って労働基準法があまり意識されないし、現場の雰囲気にしても、医師が労働者であるという意識はあまりないようです。

私はスーパーローテーションの第1期生ですが、非常に過酷だったという記憶しかありません。スーパーローテーションというのは、2、3ヵ月ごとに内科、外科、精神科、産婦人科、小児科、麻酔科、その他と診療科をローテートしながら研修をするというものです。少し慣れたころにはすぐ次の診療科に移動してしまうので、慣れてはすぐ振り出しに戻り、の繰り返しでした。

そんな環境の中、例えば、有給を取った記憶はないですね。労基法は知っていましたから、他にもいろいろ権利はあるのはわかっていました。しかし、人間関係も数ヵ月ごとに変わるので、どこで有給をとったらよいのか、とても言い出しにくい時代だった気がします。

今は研修制度も何度かの改正があり、だいぶ風向きが変わったようで、定時で研修医が帰ってしまうのが当たり前で、むしろ上級医の方が困ったり、という話もよく聞きます。

唐橋:つらい思いをしているお医者さんがたくさんいる、と。

鈴木:私自身がそうだったからよくわかります。ただ、医師自身も意識的にいろいろな意味でリスクマネジメントしていかないと危ない時代だと思います。

無理難題を押し付けられて、絶対ノーと言わなきゃいけない時に、ノーと言えずに大変なトラブルに巻き込まれる先生も多々いらっしゃいます。

私も弁護士になる前、もし事故等に巻き込まれた際に、医師としての自分を守ってくれる弁護士さんはいないかと探して、「医療訴訟」専門という人を何人か当たったのですが、話を聞けば聞くほど心配になってきてしまったという経験をしたことがありました。

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鈴木:解剖学的な基礎知識すらなく、日常医師として私が心配・危惧していることについて相談をしても、前提知識がまったくなく、患者さんに説明するがごとく一から前提知識を説明しなければならないことはありました。

私は特段医療事故を起こしたことはありませんから、医療のあり方やリスクマネジメントについての相談をしたかったわけですね。つまり、争点が定まっていない状態で。医療訴訟であれば、ある程度争点がはっきりしていますが、事故が生じる前のリスクマネジメントについていえば、争点ははっきりとはしていないですからね。

後から考えたら「医療」の専門と、「医療訴訟」の専門は似て非なるものだなと感じました。私が求めていたのは、「医療訴訟」の専門の弁護士ではなく、「医療」の専門の弁護士さんだったとそこで気が付きました。

そこで、お医者さんを守る「医療」の専門の弁護士の必要性を強く感じて、弁護士になる意思を固め、司法試験に挑戦しました。

 

オンラインの医療相談でできること・できないこと

 

唐橋:サービス開始にあたって、鈴木先生、野崎先生には「UrDocポリシー」を監修していただきました。UrDocで医療相談を担当するお医者さんための、いわば行動規範です。

鈴木:大枠としては、初診する際には対面診療は必要なくて、原則として診療は行わずに受診勧奨を行う。ただ、診断の前提となる病歴の聴取はできる、といった形ですね。これであれば、厚労省のガイドライン(*1)を素直に読めば、「オンライン診療」にあたらない、となりますね。

(*1)2018年3月「オンライン診療の適切な実施に関する指針」。医師 - 患者間の遠隔医療を「オンライン診療」「オンライン受診勧奨」「遠隔健康医療相談」の3つに分類した上で、「オンライン診療」について、原則として初診は対面で行うことを求めている。

唐橋:これがすごく難しかった。いろんな自治体にも問い合わせてみましたけど、言うことがバラバラなんですよね。ある区では「病歴聴取は診療ではないのでどうぞやってください」と。ところが別の区では、「それは診療です」となる。本当に困って、お二人に相談しました。

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野崎:厚労省のガイドラインは「オンライン受診勧奨」を実施する場合も、ガイドラインに沿って実施するように書いてあるのですが、そもそも「受診勧奨」が、医師法20条が無診察での実施を禁止する「治療」等に当たるのか。文献をいろいろ調べてもなかなか書いていないんですね。

ガイドライン案を読んでも、そもそも「受診勧奨」なるものがこの「治療」等に該当するのかが明確ではなかったんです。該当することを前提としているようには読めるんですけど、該当しないのであればガイドラインに違反しても医師法違反の問題を生じないことになってしまう。

この点は、事業の根幹に関わるところですから最大限チェックしなければいけないと思い、パブリックコメント(*2)を書きました。同時に厚労省の担当にも確認をとった。その結果、厚労省は「受診勧奨」も医師法20条の「治療」等に該当するとの姿勢を取っていることがわかった。あの段階でガイドラインと「オンライン受診勧奨」の位置付けについて明確に整理できてよかったですね。

(*2)「オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)」について、2018年3月12日から3月23日までパブリックコメントの募集が行われた。

唐橋:3人の間でも受け取り方が違っていて、議論していました。パブリックコメントをまとめることで頭の中も整理されましたし、そうした議論の一つひとつが「UrDocポリシー」に集約された感があります。

 

立体的な遠隔医療の可能性

 

鈴木:話は変わりますが、遠隔医療のイメージって「お医者さんがクリニックまたはその他の場所にいて、自宅にいる多くの患者さんを診察する」というものですね。要するに1人のお医者さん、対、自宅にいる大勢の患者さんという感じで。

でも、「オンライン受診勧奨」ではなく「オンライン診療」についての話になりますが、例えば、医療法人として分院を展開しているケースで、本院には院長がいて、分院にはなかなか経験豊富な先生が集まらないという状況に応用できる可能性があります。もちろん、ハードやソフト等のシステムを整えないといけないのは言うまでもありませんが。

唐橋:考えられますね。

鈴木:たとえば、専門性のあまり高くないお医者さんが分院にいると仮定して、そこに、専門医でなければみれない、かつ緊急性のある患者さんが来たとする。その時は遠隔で、専門医の先生が患者さんを診療することもあり得る。

つまり、各診療所間での医師の専門性の高低の差を減らし、各院の医療レベルを一定以上に保つことも今後可能性として考えられますね

さらに分院でお医者さんがいない場合でも、すでに初診時の対面診療が済んでいる患者さんが分院に来て、そこからつないだ先にお医者さんがいれば遠隔診療で対応するということも、今後考えられますよね。

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唐橋:例えばAクリニックには医者がいて、Bクリニックには看護師しかいなかった時、Bクリニックに来た患者を、Aクリニックの医者が遠隔で診療したとする。これはOKなんですか?

鈴木:Aクリニックの医師がその患者さんを初診時に対面で診療していれば、現在のガイドラインに照らせば大丈夫と解釈されると思います。

そもそも遠隔医療って、患者さんは家にいる想定ですから、クリニックに来てるなら患者さんにとってはより良い環境ですよね。

このあたりは学会でも話しましたが、カメラの角度や映像の鮮明さ等の諸問題による医療事故を防ぐという観点からすると、患者さん自身が、映像環境が整ったクリニックに来ているということは新たなタイプの医療事故を減らす方向に傾くと考えられますので、良いことではないかと思います。

唐橋:Bクリニックに初診の場合はどうですか?

鈴木:解釈が難しいところですけど、AとBが属する医療法人で1回でも対面診療していれば、Bクリニックに行くのが初めてでも法人全体として初診にはならないと考えることもできます。ガイドラインでも「オンライン診療」は対面での初診を前提にしていますが、厳密にはオンラインで診療するお医者さんと対面しなければいけないとは書いていないですからね。

野崎:そういう評価もありえますね。

鈴木:趣旨はあくまで、その病状を直接1回も把握していないのにオンラインで診療すべきではない、というところにあるとも解されます。

そうだとすれば、直接診療して、その情報を適切に共有できるのであれば、オンラインでの診療は初診で診察した医師とは別の医師でもいいのではないかとも考えられます。

唐橋:ガイドラインではそのあたりがあいまいな印象です。

野崎:必ずしも同一医師であるべきかというところまで、まだ議論が進んでいないですね。

鈴木:今は一人のお医者さんと多くの患者さんをつなぐ観点しかないけれども、発想を変えて、クリニックtoクリニックで、専門性の高いお医者さんとそれほど専門性の高くないお医者さんをつなぐという観点から考えると、遠隔診療の趣旨にかなってると言えますね。

分院展開する医療法人であれば、UrDocのようなプラットフォームを使って分院に案内して、そこから遠隔診療につなぐといった合わせ技ができる可能性があるわけですよね。遠隔医療をもっと立体的に捉えられないだろうかと、ガイドラインを深読みしながら議論できそうですね。まだはっきりしていない部分なので、きちんと法律や法解釈の流れを見ておく必要があると思いますけどね。

唐橋:オンラインで受診勧奨してオフラインでの対面診察へつなげる。そこから再びオンラインに戻して診療を続ける。トータルに提供できると面白いですね。

鈴木:そうですね!

唐橋:今、お医者さん同士で交流できるサービスはありますけど、もう少し違った形でお医者さん同士をつないであげる事も必要だと思いました。

(後編へ続く)

 

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