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遠隔医療の今と未来についてUrDocが考えること【後編】

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厚労省のガイドラインを踏まえて行われた鼎談のレポート、後編をお届けします。参加メンバーはUrDoc法律顧問の鈴木孝昭弁護士(弁護士法人AIT医療総合法律事務所)、野崎智己弁護士(10月1日より同)、そしてUrDoc代表の唐橋。話は遠隔医療をめぐる規制のあり方へとおよびます。

【前編】はこちら 

 

遠隔医療をめぐる規制の現状

 

鈴木:法律の規制ってそれこそたくさんあります。ただ、法律に違反していたとしても、すべてが摘発や行政処分というわけでもないようです。 実際に違法でも、任意の「お尋ね」で改善したら大丈夫なこともありますし、状況によりますが、逮捕されてしまうこともないとは言えません。

広告規制はこれまでは、刑罰や罰則規定があっても行政指導のみで、あまり摘発されないことが多かったですが、2018年6月から医療法が改正になり、風向きが変わってきた気がします。リーガルチェックなしの医療広告は非常に危険なこととなってきています。

野崎:悪質な違反、典型的な違反だったら営業停止などの処分もあり得るでしょうね。医療の世界は患者さんの生命や身体に多大なる影響がありますので、国も厳しい規制をせざるを得ない状況になったということですね。

ただ、少なくとも現段階において、遠隔医療の領域で上乗せしての厳しい規制については、まだ聞いたことがありません。 

唐橋:このところ事業提携のお話をいただくことが増えていて、中には気をつけなければいけない話もあるんです。例えば「保険外診療であればオンラインで診断も処方もできます、だから薬局と組んで大きく展開しましょう」と。そういう認識で大丈夫だろうかと、話を持ってこられた方を逆に心配したことがありました。

野崎:オンラインだけで話を聞いて、処方箋を書いて、処方するようなサービスですね。

唐橋:いずれオンラインだけでできるようになるかもしれませんが。ただ現状では、保険外だから大丈夫という話ではないと理解しています。

私自身は、安全性を差し置いて事業拡大を追求するべきではないという考えを持っています。どんなサービスでも言えることですけど、医療であればなおさら、安全性を最優先にしなければいけない。その意味でも遠隔医療をめぐる法規制の行方には目を配っています。

野崎:トラブルが起きないうちは厚労省も取り締まりの手間と、失われる利益を比較考慮して黙認しかできない場合も多々あるでしょうね。あとは、そこまで細かく把握できていない可能性もありますね。

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鈴木:黙認というのはあるかもしれませんね。

例えば、産業医は、労働者50人の事業所では嘱託で月1回以上、1,000人以上では専属で1人以上、3,000人以上では専属で2人以上と法律上定められています。この「専属」というのは他の事業所で産業医をやってはいけないという意味であって、「常勤」とは違うんですね。毎日訪問する義務はないとも解釈されます。

唐橋:一般には専属イコール常勤というイメージがありますけど、たしかに文言としては違いますね。常勤で募集していればもちろんそれは兼ねているとも言えます。ただそれは、法律上の専属を包括してさらに常勤で産業医を置くという意味ですから、契約がどのようになっているか、そもそもどのような契約をしているかによるわけですね。

鈴木:他方、嘱託産業医についても問題があります。例えば、嘱託産業医として1,000人未満の複数の企業と契約するにしても、極端な話、月1回ずつ、900人の企業を10件訪問するということは物理的にできてしまいます。基本的に月1回以上の訪問ですからね。1回でも違法ではないわけです。

ただ、法律では、1,000人規模の企業については、1人以上の産業医を専属でと言っています。社員1,000人以上で専属産業医1人以上という決まりは、1人でみられる適正な人数は1,000人から3,000人未満だということの裏返しなんです。

そうすると、1人の嘱託産業医が900人の企業を10社、合計で9,000人を担当するとなれば、労働安全衛生法の文言をクリアしたとしても、法の趣旨に照らせば違法と解釈される余地もあると考えられます。

野崎:法律的な考え方を知っていれば、すぐわかる話ですね。法の趣旨に照らして解釈すれば、そのような理解もあり得ます。

鈴木:それは嘱託産業医でも同じはずで、100人の企業なら9社まで、200人の企業なら4社まで、つまり合計で999人を超えないことが目安になりますね。実際には、アルバイト感覚で多くの企業を掛け持ちして、これをオーバーする先生も多々いると聞きます。

企業の側も嘱託産業医の先生を雇っているのであれば、その先生がトータルで何社、何人を受け持っているかを確認しなければならないということになるでしょう。ただ、注意すらできていないのが現状だと思います。

唐橋:厚労省が表立って規制に乗り出したという話は聞いたことがないです。黙認しているんでしょうか。 

鈴木:トラブルが起きていないから、もしくは、トラブルが起きても探知していないからだと考えられます。民事訴訟や労災の形でとりあえずは解決しているから、知っていてもメスを入れない、ということもあり得ますが、行政の判断まではちょっと私にもわかりませんが、放置できない問題だとは思います。

 

法規制か自主規制か

 

唐橋:ただ、遠隔医療の場合はどうでしょう。産業医学との単純な比較はできませんが、遠隔医療は生死に直結するケースもあり得ます。

野崎:いろいろなことが起こり得る。あまりに野放図だと、一気に規制が入るような、大きなトラブルにつながる可能性はあります。

鈴木:厚労省のガイドラインでは、「オンライン診療」は対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められています。でも、全然通院しない患者さんもいるかもしれない。その患者さんと、カメラの位置がずれたままオンラインでやりとりを続けるうちに取り返しのつかない事態になる、といったトラブルも想定できます。これが学会でも触れた話ですね(前編参照)。いわゆる「遠隔医療によって新たなタイプの医療事故が起こる」という話です。

今、遠隔医療でどこかの会社が大きなトラブルを起こすと、遠隔医療の発展を年単位で遅らせるような規制が入りかねないですよね。

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唐橋:国からの規制でがんじがらめになることを望むわけではないんです。逆に、がんじがらめにされないために、事業者自身が慎重になるべき部分もあるのではないか。ある程度の自制も必要だと思っています。

野崎:法律って解釈・運用の余地が大きい部分があるんですね。解釈・運用の余地がある部分については業界における自律的なコントロールが重要です。

唐橋:そうですね。国の規制でなく、自律的にコントロールができるような状況をまずは作っていく。そのためにも、遠隔医療に関わる人たちの間で意見を交換したり、知見を共有したりと、もっと議論を深めていく場が必要だと思います。先日ほかの事業者の方たちとも、そういう話をしていたところです。

 

外国人医療について

 

野崎:UrDocがカバーする外国人医療という面では、法制度というよりは、受け入れ側の態勢が追いついていないことに課題がある印象です。例えば、医療機関側で受入れ可能な言語が限られているという問題があります。

唐橋:私がUrDocを始めたきっかけもそこにあります。UrDocでは、日本語を話せない人でも別の言語、例えば英語や中国語、韓国語などで医療相談を受け付けて、受診勧奨する。近くの外国人受け入れ可能な医療機関や、近くの薬局を地図上に自動表示する機能もつけています。

というのも、以前都内の病院に勤務していた時のことですが、外国人がたくさん来るんです。その病院は外国語の話せる医師が多くいたので、診療は問題ない。でも患者さんが口々に訴えるのを聞くと、病院に来るまでが大変だったと。脚をパンパンに腫らして来た人に、どうしてここまで我慢していたのかと聞くと、日本語がわからないから病院を見つけるのが大変で、病院に行きたくても行けなかったと言うんですよ。

言葉もわからない、土地勘もないという状況で、ネット検索だけで適切な病院にたどり着くのは難しいです。

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鈴木:どんな病院で受診して、どういうふうにお医者さんとコミュニケーションとるか。すぐに帰国しても大丈夫なのか、それとも、もう少し日本に滞在したほうがいいのか。そのフォローをオンライン受診勧奨でできると、外国の方も安心して日本を旅行できるようになりますよね。 

そういう場面では、決定的にツールが大事ですね。外国人にとっての医療の道しるべとして、UrDocはすばらしいと思います。

唐橋:日本の医療は、思ったより国際化が進んでいないところがある。言語対応、医療費未収、情報の偏在、さまざまな課題があって、そのすべてをアプリ一つで解決できるとは思っていませんが、できるところから始めるしかない。受け入れ側の医療機関との連携、さらには海外の遠隔医療サービスとの連携も、積極的に行って行きたいと考えています。 

今日は長時間おつきあいいただき、ありがとうございました。 (了)

 

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